星の王子さま(サン=テグジュベリ作)からの一節です。
次の星には、酒びたりの男が住んでいた。
王子さまがここを訪ねたのは、わずかな間だったが、それでもとても憂うつな気持ちになってしまった。
「そこでなにをしてるの?」王子さまは、酒びたりの男に聞いた。
男はからっぽになった瓶と酒の入った瓶を、それぞれずらりと並べて、その前で何も言わずにすわっていた。
「飲んでいるんだ」暗い面持ちで、酒びたりの男は答えた。
「どうして飲んでいるの?」王子さまがたずねた。
「忘れるため」男が答えた。
「忘れるってなにを?」なんだかかわいそうになってきて、王子さまは聞いた。
「恥じているのを忘れるため」男はうつむいて、打ち明けた。
「何を恥じているの?」救ってあげたいと思って、王子さまはたずねた。
「飲むことを恥じている!」酒びたりの男はそういうと、沈黙の中に、完全に閉じこもった。
王子さまは、どうしたらいいのかわからなくなって、その星を後にした。
話は現実に戻り、最近目にした場面です。
朝から赤い顔をした老人が、その孫娘に語りかけています。
「おじいちゃんは朝からお酒ばかり飲んで、寝て、また飲んで・・。ダメなことはわかっとるのに、
やめられんのよ・・・。」
少し離れて聞いていた私も、なんとも切ない気持ちでした。
ダメといわれる行為を繰り返す人。その心の中にある純粋性、孤独、繊細さ・・・。
その物語を私たちはどれだけわかろうとしているのでしょうか・・? 自省を込めて。