酒びたりの男

星の王子さま(サン=テグジュベリ作)からの一節です。

 

次の星には、酒びたりの男が住んでいた。

王子さまがここを訪ねたのは、わずかな間だったが、それでもとても憂うつな気持ちになってしまった。

「そこでなにをしてるの?」王子さまは、酒びたりの男に聞いた。

男はからっぽになった瓶と酒の入った瓶を、それぞれずらりと並べて、その前で何も言わずにすわっていた。

「飲んでいるんだ」暗い面持ちで、酒びたりの男は答えた。

「どうして飲んでいるの?」王子さまがたずねた。

「忘れるため」男が答えた。 

「忘れるってなにを?」なんだかかわいそうになってきて、王子さまは聞いた。

「恥じているのを忘れるため」男はうつむいて、打ち明けた。

「何を恥じているの?」救ってあげたいと思って、王子さまはたずねた。

「飲むことを恥じている!」酒びたりの男はそういうと、沈黙の中に、完全に閉じこもった。

 王子さまは、どうしたらいいのかわからなくなって、その星を後にした。

 

話は現実に戻り、最近目にした場面です。

朝から赤い顔をした老人が、その孫娘に語りかけています。

「おじいちゃんは朝からお酒ばかり飲んで、寝て、また飲んで・・。ダメなことはわかっとるのに、

やめられんのよ・・・。」

少し離れて聞いていた私も、なんとも切ない気持ちでした。

ダメといわれる行為を繰り返す人。その心の中にある純粋性、孤独、繊細さ・・・。

その物語を私たちはどれだけわかろうとしているのでしょうか・・? 自省を込めて。

 

 

 

 

 

2014年1月17日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : naomi-room