「騎士団長殺し」を読む

村上春樹さんの新刊、読みました。

「騎士団長殺し」

 

村上春樹さんの小説にはずいぶん助けられるような気がします。

登場人物に自分を重ね合わせたり、物語の深みに入っていくことで、私も自分の無意識にアクセスするのです。

今回も存分にそれを味わいました。

登場人物たちの、幾重にも重なり混然一体となって進む再生のプロセスに、いつのまにか私も巻き込まれている。

読み終えて、きっと私の中にも小さな種がまかれたことでしょう。

これでいいんだ、と背中を押された気もします。

 

「顔のない男」は主人公に言います。

「お前が行動すれば、関連性がそれに合わせて生れていく」

人は時に、目の前に現れた道をただ進むしかないことがあります。

人生は自分の意志で切り開いていけることばかりではない・・・

でも、人が生きていくその背景にはちゃんと何かしらの力が働いている。

人生の節々で、また日々の中で、本当にそう感じます。

 

また、ひとりの人が、内面に深く降りて再生を図る時、それはひとりに完結したプロセスではない。

その作業は周りの事象も一体となった渦となり、全体を運んでいくものだと思います。

一見、人を助けているようにみえても、それは自分のプロセスそのものであったり。

存在どおしに上下関係などなく、深いところですべてはつながり、必然によって事は起きている・・

物事は共時的に進んでいくのだと思います。

 

登場人物の一人が最後の方で語る言葉です。

「私にこれから何が起こるのかを見届けてみようって。それがすごく大事なことであるように思えた」

一見受け身であるようにみえながら、とてもどっしりとした潔い姿勢ではないかと思うのです。