父との電話で

ちょくちょく実家の父に電話をします。

去年までは畑仕事に精を出し、自分の食事も不自由なく作っていた父でしたが、今年になってがくんと体力も落ち、認知症の症状も出ています。

人と話す機会も減ったようです。

そんな中、父の一日がちょっとでも豊かになるといいなと思って、電話をします。

 

昨日は、亡くなった祖母(父の母)の実家のことを話題にしてみました。

私も4歳くらいの時、一度祖母に連れられて訪問したことがあるのですが、ジクソーパズルのごく一部のピースをかろうじて持っている程度の記憶です。

 

私:「おばあちゃんと汽車で行ったことがあるよ。近所で馬をみたような・・・」

父:「あーそうそう。隣の家に馬がおっての、子供の頃はあの馬が怖かったわ」

私:「え~、やっぱり馬がいたんだ。他に覚えてるのは、離れに通されてお人形で遊んでもらったこと」

父:「あ~、離れはこういう風な間取りでな、わしらが子供の時はあの離れの2階に泊まっとったわ」

私:「家の裏に山があったね」

父:「そうそう、正戸山を背にした東向きの家じゃった。家の前は段々に畑があったわ」

私:「そういえば、おばあちゃんが正戸山ってよく言ってた」

 

こんな風に会話は続き、父の話は祖母の兄弟や従弟にのことにも及んでいくのです

今まで知りえなかった、一族のエピソードも聞けたりして、私にとっても興味しんしん。

思いがけず引き出しの奥から出てきた、古びた小箱を一緒に探検する気分です。

 

正戸山を兄弟たちと駆け降りる少女の祖母が目に浮かぶよう。

父と私は、懐かしい人たちの存在感にすっぽりと包まれます。

今も幾重にもつながる縁を感じ、じんわりと心が温かくなりました。

 

父の電話の声はいつもより、ずっと元気でした。