毎日のように自分で豆をひき、コーヒーを飲みます。
コーヒーほど世界中で愛されている飲み物はないかもしれませんね。
20年以上前に写真展で出会い、とても心に残っている写真があります。
写真:長倉洋海 写真集 「サルバドル」より
題名: 町の食堂で、一杯のコーヒーを大切に飲む老農夫1984.12
説明には「ラ・パルマの町の小さな食堂で撮影。老人はソンブレロ(帽子)と節くれだった手から農民に見えた。買い物に町に来たのだろう。コーヒー一杯で遠慮したのかイスにも座らず、味わうようにゆっくり飲む姿が印象的だった」とあります。
久しぶりに、手元にある写真集を広げると、やはり心が動きます。
老人の奥ゆかしいたたずまい。
日ごろの労働を物語る節くれだった手で、大切にコーヒーを持ち、一人でゆっくりと味わっている。
一杯のコーヒーとこの刹那が、この老人にとってどれほど貴重なものなのでしょう。
人間への愛おしさが溢れていて、撮影者の温かいまなざしがあります。
この写真に出会った当時の私は、周りのみんなが飲むからくらいの理由で、習慣的にコーヒーを飲んでいたので、一杯のコーヒーをこんなにも大事に飲んでいる人がいるのだ、とハッとする経験でした。
今も、毎日コーヒーを入れていると、日によっては粗雑に入れるときもあり、全部飲まずに残すこともあり・・
この写真をみると、一杯の飲物が人にとってどういうものであるか、改めて考えるのです。