朝起きたら、窓の外、一面の雪景色でした。

今もちらちらと舞い降りています。

年の瀬の思いがけない雪です。

         エゴノキのてっぺんに小鳥

 

「あとかくしの雪」という昔話があります。

ある貧しい村を、お腹をすかせたひとりの旅人が通りかかります。

村人たちは助けてあげたいけれど、自分たちも日々の食べ物に困っているので、助けることができない。

とうとう旅人は村はずれで行き倒れてしまう。

通りがかった一人暮らしのお婆さんが、家に連れ帰り、わずかな雑炊を振舞いますが、旅人にはとても足りていない様子。

おばあさんは意を決して、庄屋さんの畑に忍び込み、大根を一本引き抜いて帰ります。

大根汁を作って旅人に食べさせ、夜明け前に旅人を旅立たせるのです。

そのころ庄屋はまだ薄暗い畑で、大根が引き抜かれた跡と、点々と続く足跡をみつけます。

証拠の足跡は残っている……庄屋は夜明けを待って、代官所に届けることにします。

さて夜明けとともに、庄屋が支度を整えて外に出ると、外は一面の雪。

おばあさんの足跡はあとかたもなく雪に覆われていました。

まだ雪が降るにはひと月も早い日のことじゃった……というお話。

 

私はこういうお話が大好き。

ファンタジーでありながら、人の世の確かな側面を映し出しているような気がするからです。

自然に宿る何かが、あるとき意思を持つかのように動き、人を助けることがある、思いがけないことによって物事がうまくいくことがある。

体験的に思うのです。

(逆に戒めをあたえることも…)

 

今年も終わります。

泣いたり、怒ったり、悲しんだり、へこんだり、笑ったり、どんな自分も愛おしい。

この一年のどんな自分も、許そうではないですか。

 

今日の雪は、「あとかくしの雪」

一年のすべてを包み、許す、優しい雪に思えます。

みなさま、いい年をお迎えください。

 

頑張ったんやで

京都に一日ドライブしてきました。

今回は車なので、郊外の南のエリアに行ってみようと、伏見区方面に向かいました。

まずは混雑覚悟で、世界文化遺産 醍醐寺へ……

     醍醐寺 三宝院庭園

意外にも人が少ない。

紅葉も終わろうとしている曇天の日、ゆっくり散策できました。

     仁王門をくぐり伽藍エリアへ

途方もない年月をへた山門の佇まいと、冬の木立へと移ろいゆく紅葉の終わり、刹那のハーモニーはやさしい。

 国宝 五重塔

これはすごい、大迫力の五重塔。

見上げると、楼閣で勇壮に槌をふるう、建設当時の大工さんの姿が見えた気がした。

この困難なミッションで、命を落とした職人さんもいたであろう……ふいにそんなイメージがわいたその時、

「何人か死んだだろうね……」

夫と娘がほぼ同時に口にした。

「同じこと考えていたよ」と驚いて私が言い、3人で思わず顔を見合わした。

「頑張ったんやでって、言ってきたんだよ、今」と娘。

頑張ったんやで……この言葉が真っすぐに心に響いた。

千年以上の時を超え、当時の職人さんたちとつながれた気がした。

背中にじーんとパワーを感じながら、醍醐寺を後にしたのでした。

 

さて、次はどこに行こう。

京都市公式の「紅葉だより」というサイトをみていたら、同じ伏見区で城南神社という紅葉の名所をみつけた。

紅葉と、咲き始めの椿が美しいらしい。

車で一路、城南宮を目指す。

これが結構遠い、同じ伏見と言っても広いのですね、

もはや京都感のない郊外、町工場や、住宅、ブドウ畑を車窓にみながら、やっと着きました。

鳥居手前の祈祷殿で、新車と思しき車が、5台まとめてお祓いを受けていた。

遅めの七五三のお祝いに訪れた家族もいる。

地域の氏神様みたいなお宮なのかな、ちょっと外したかも……ちらっと不謹慎なことを思った。

 

お参りを済ませ、目的の庭園へ。

後で知ったのですが、庭園は広くて、5つのエリアからなっている。

最初の「春の山」は、ツツジ、しだれ梅など春の花のエリア、今は花もなく木立だけの寒々しい趣、何故かここをゆっくり見過ぎた。

次の「平安の庭」に入ると、一転目の覚めるような紅葉、「わあ、すごい」と思ったら、背後から声がかかった。

「閉門のお時間となりましたので、お急ぎください」

巫女さんが追い立てるように後からついていらっしゃる。

燃えるような紅葉の下、4つのエリアをひたすら速足で、すごすごと出口に向かったのでした。

     室町の庭の堀

「ゆっくり見たかったなあ」帰途、名残惜しげに城南宮のパンフレットを眺めていた。

そこには平安京に都が還ったときにさかのぼる、城南宮の由緒が記されていました。

とりわけ「方除けの大社」として名のあるお宮らしく、全国各地からお参りがあるという。

「方除け」とは、方位の障りや家相の心配がないよう祈願することらしく、旅行などの道中や滞在中の安全、車の交通安全を願ってお参りするのもこれに当たるという。

ぬぬ、これはこれは……

今回は、新車の初ドライブ。

「方除け」の神に導かれたのかもしれませんね。