ゴールデンウイークは遠出しなかったけれど、この本の中で、私も瀬戸の離島へフワッと旅してきたかな・・
「うつくしい人」 西加奈子著
一見、都会でうつくしく生きている「百合」。
でも実は自信がなく、心の中に得体のしれない何かを抱えている。
人がどう自分を見ているか気になり、絶えずびくびくしている。
逃れるようにやってきた瀬戸の島のホテルでの数日間の滞在。
そこで出会った、これまた何かを抱えた二人の人物との交流。
3人の相互作用によって、三者三様に、それぞれの中で何かがほどけていく感じがとてもよく描かれています。
そうなのです。
こういうことって小説の中のことだけではなく、現実でもままあるなと思います。
偶然の出会いから思わぬ展開が生まれること・・。
神様は人と人のの出会いにおいて、粋なキャスティングをするものだなと思います。
物語の背景もとてもいい。
瀬戸の穏やかな美しい海、忘れ去られたようなホテルの図書室。
ある日パズルのピースがすべて揃うように、動き出す。
今までさわらなかったところに自ら向き合うチャンスが生まれる。
物語の終わり、百合がずっと避けていた、問題を持つ姉との関係に変化の兆しを予感させます。
人生はある日、いい風が吹くように、潮が満ちるように動き出すことがある。
この世のシナリオを信頼してドーンとゆだねてみたいものです。