光と影と

街でイルミネーションやクリスマスツリーを見かけるようになった。

デパートの華やかなツリー、小さなカフェの植え込みにも控えめな青い光の点滅…

しんと冷える夜、帰りを急ぐ足も思わずとまる。

 

先月旅立たれた谷川俊太郎さんの詩集を開いていたら、「大きなクリスマスツリーが立った」という詩が目にとまった(以下 谷川俊太郎詩集 「これが私のやさしさです」より引用)

 

 大きなクリスマスツリーが立った

キラキラ光っていて

この世じゃないみたいにきれいだけど

これも人間がつくったものだよ 

(中略)

キラキラ光っているものは

どうしてもどこかに影をつくる

陰しか見えない人だっているんだよ

陰の方がいいとすねている人だっているんだ 

そんな人にかぎってほんとうは

もっともっとキラキラと明るいものに

それが何かはよく分からないくせに

もう泣きたくなるほどこがれているのさ

(詩はこのように終わる)

 

どんなことにも、どんなものにも、光があれば影もあるものだと思う。

人はキラキラした世界を見ているとき、同時にその裏にある影を感じている。

光だけ見ようとする、反対に陰しか見ようとしない、どちらも窮屈ではないだろうか。

せっかく光も影もあるこの世界に生きているのだから、どちらとも大らかにつながっていたい。

光は影があってこそキラキラ輝く。

陰は光があってこそ、漆黒の深みが魅力となる。

 

街にイルミネーションが輝くこの時期、光と影を感じやすいような気がしている。

 

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