ときどき開いて眺める絵本 「ふとっちょねこ」
デンマークの民話がもとになっている。
簡単にあらすじを紹介すると……
あるところにおばあさんが住んでいて、お粥を作っている時におつかいを思い出す。
そこで、ねこにお粥をみているよう頼んで出かける。
ねこはお粥があまりにおいしそうで、きれいさっぱり食べてしまう。
ついでに鍋も食べ、帰ってきたおばあさんも食べてしまう。
それから散歩にでかけたねこは、道で出会うものを次々と食べて、まるまると太っていく。
おのをかついだ木こりに会うまでは…
まるまる太ったねこにに木こりは言う。
「おんや、ねこちゃん いったい何を食べなすった?」
ねこが今まで食べたものを伝えると、木こりはたしなめる。
「いやいや、そりゃあだめだよ、ねこちゃんや」
木こりが、ねこのお腹を斧でバッサリと切ってあげると、中から出てくる出てくる人や鳥。
最後におばあさんがでてきて、なべとおかゆをもって、うちへかえっていきましたとさ。
内容はなかなか恐ろしいが、のんびりとした田舎の風景の中で、たんたんと話はすすむ。
私が特に好きなのは話の結末、ねこのお腹から出てきた者たちはそれぞれ何事もなかったように、もとの場所に帰っていく。
みんなでねこをこらしめることもなく、ねこに丸ごと飲み込まれた恐怖におののくこともなく…
ここでつい思い浮かぶのはグリム童話「おおかみと七ひきの子やぎ」
どちらも(おおかみもねこも)人や動物を食べてしまうわけだが、この二つのお話は結末が大きく違う。
おおかみは、お腹に石を詰められ井戸に落ちて死んでしまう。
悪いことをすると厳しい罰があたえられるのだ。
それにひきかえ、ふとっちょねこは木こりにお腹をとじられ、何事もなかったように今までどおり村で暮らすらしい。
きっとまたおばあさんの家にふらりと寄って、昼寝などするのだろう。
ねこという多面性を持ったキャラクターがたっている。
身近な愛らしさ、気ままさ、ふてぶてしさ、自由な感じが良く出ている。
そうそう、木こりに出会う前、ねこは牧師さんも普通に食べてしまう。
道を説く役目の牧師さんでなく、実際的な仕事を生業としている木こりが解決に導くのも面白い。
みんなで生きていく知恵や、ちょっと楽に生きるヒントを与えてくれるお話かも知れない。
20年以上前、母が孫娘のために、たまたま立ち寄った本屋さんでみつけて買ってくれた。
こんなに長いつき合いになろうとは……