ナバホへの旅 たましいの風景 河合隼雄著
心理療法家の河合隼雄さんがアメリカの先住民「ナバホ」の人たちが住んでいる土地を訪ね、
その歴史や生活、シャーマンとの対話について、著者の見解とともに紹介しています。
私が興味を持っていることがたくさん出てきて、とても興味深く読みました。
例えば、心理療法とシャーマニズムとか、西洋医療と伝統的医療の共存、白人と先住民族の文化の違いなど。
それにしても、アメリカの中にある「ナバホネーション」については、今回この本を読むまでほとんど
知りませんでした。ナバホという名前を聞いたことがあるくらい。
合衆国政府にも認められていて、相当な独立性を持ち、政府や議会もあるそうです。
本によると、ナバホはアラスカあたりからやってきたと言われていて、アメリカの先住民のプエブロやホピと
摩擦を繰り返しながらも共存していた。
ところが、16世紀のスペイン人の侵入に続き、アメリカの白人からのすさまじい圧迫があり、
それでも屈することなく自分たちの文化を守り抜いて今に至っている。
かつて先住民の文化を徹底的に否定しようとしたアメリカ政府も、今ではむしろ先住民の知恵に学ぼうとする
態度に変化してきて、政府のサポートする病院などにおいてアメリカ先住民の伝統的な医療を認めるところも
でてきているとのこと。
こういうところ、アメリカやヨーロッパの一部の国は柔軟ですね。
犯罪捜査に超能力者が協力したり、レイキ療法に保険が適用されるなど、テレビでも目にすることがあります。
近代化を成し遂げたようにみえる日本が今、抱えている問題や状況を考えるとき、できるかぎり伝統を
守ろうとしているナバホの人たちの生き方から学ぶべきことは多いと感じます。
日本もまた、白人文化とは質の違う、より大地に根ざした生き方をしてきた民族だと思うのです。
他国の舞台の上で、窮屈な演技を余儀なくされるのでなく、一度その舞台の外に立って
自らをみつめてみることが必要に思えてなりません。
国の成り立ち、神話、歴史、宗教観、食べてきたもの、欧米とは異なる文化を脈々とつむいできた日本人が
自分たちのアイデンティティをもう一度知り、これからどう生きていくのか、世界に伝えていけることは・・?
問われていると思います。
本来のアイデンティティと異なる生き方を続けていると、人も国もいつか病理をかかえてしまう。
とてもシンプルなことなのだと思うのですが・・・