カズオ・イシグロさんの小説を初めて読みました。
わたしを離さないで Never Let Me Go
カズオ・イシグロ
「介護人」キャシーの語りで物語は進んでいきます。
最初、「介護人」という職業から、病院か福祉施設のお話かと思いました。
ところが、読み進むにつれ、その衝撃的で奇怪な世界が現れてきます。
登場する施設の子供たちが、自分たちの特殊な状況の理解にさまようと同様、私もさまよいながら読み進みます。
そして徐々に物語の真実が明らかになってきます。
背景がどうあれ、その中でより輝きを増す子供たちに魅了されました。
人が小説を読むのはなぜか・・。
私が思うのは、人は小説を読んで登場人物の気持ちを感じている時、同時に自分自身が大切な体験をしているのではないかということです。
そうそう、私が感じていたのはこういうこと、私が言いたかったのはこれなんだ。
その瞬間、とても心が広がっている、癒されている、力が湧いている。
タイミングよく、NHKの番組「白熱教室」にカズオ・イシグロさんが登場され、その言葉を聞くことができました(要約しています)
なぜ、小説を書くのか。
それは心情を伝えたいから。
知的意見を伝えたいわけでも、何かについて議論したいわけでもない。
自分たちの体験に対して、人間としての感情を分かち合うことは非常に重要なことなんだと思う。
人間は社会で経済活動をするだけでは不十分、心情を分かち合うことが必要なのだ。
心を分かち合う・・それは人間の本能のようなものなのだ。
私は小説でこのことを最も大切にしている。
この世界を生きていく人間として心を分かち合うことを・・・
心に落ちる言葉です。
同じくイシグロさんの作品、「日の名残り」も読みたくなっています。
今日買ってこようかな・・・雪が降る前に。