映画「怪物」をみて

映画「怪物」を観てきました。

なんというかすごい作品でした。

 

物語は重層的に複雑にからみあいながら、刻々と進んでいく。

万華鏡のようにザクザクと光と影が入れかわる。

息子の異変に気づくシングルマザー、子供たち、担任教師、校長先生、それぞれの視点で物語られる。

一つの事実はいくつもの物語を生む。

自分を救うために、大切な人を救うために、生きていくために、人は自分の物語をつくる。

それは自分を救いもし、また事実をそのままみることを邪魔する。

 

人は多かれ少なかれ、事情をかかえて生きているのだと思う。

この映画の登場人物たちも、それぞれの事情をかかえている。

現在と過去、外の顔と内の顔、封印した物語、そんな大人の事情に子供たちは翻弄される。

子供たちも事情をかかえている。

 

キャストそれぞれの存在感が素晴らしかったです。

メインキャストはもちろん、名もない役の子にいたるまで、みんな存在が光っている。

なかでも中村獅童さんの凄みといったら……

にじみ出る光と影、不遜な態度の中に漂う悲しさ。

 

人は心におさまりきれないものにふれたとき、自分とは関係のない特殊なことだと思いたいのかも知れない。

自分の外に「怪物」探しをする。

事件に関する、TVや新聞等の報道をみていていつも思う。

報道もまた、わかりやすい物語に誘っていないだろうか。

事件を起こす背景にはこのようなことがあった、このような生い立ちがあった、こういう原因があった……

そう簡単なことではないと思う。

 

「怪物」とは一体何だったのか。

それは自分の外ばかり探しているうちは、きっとみつからない。

内なる「怪物」にも翻弄されながら、付き合っていこう。

 

作品のラストシーンがすごくいいです。

 

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