絵本の紹介 「わすれられないおくりもの」

以前、グリーフケアについて紹介しました。 →コチラ

今日は一冊の絵本を紹介したいと思います。

 

「わすれられない おくりもの」  スーザン・バーレイ作 絵

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森の動物たちみんなに慕われていたアナグマは、年取って死を迎えます。

かけがえのない友を失った森の動物たちは、深く悲しみます。

動物たちはどのように悲しみを乗り越えていくのでしょう。

美しい絵と文で、やさしくつづられていて、静かな感動を呼ぶ作品です。

 

やがて誰もが迎える死を、旅立っていくアナグマが静かに受け入れる様子。

後に残していく友達への想い。

互いに助け合って生きていくことの豊かさや、知恵や技を次世代に伝えることの大切さ。

悲しみをみんなで受け止めることの力強さ。

動物たちは、時間をかけてアナグマの死を受け入れ、元気になっていきます。

 

このお話は、人が生きていく上で根源的で大切なものを静かに語りかけています。

読む人それぞれが、自分のこととしてじっくりと味わえる作品ではないかと思います。

 

スーザン・バーレイは、初めて子供のためにこの作品を書きました。

きっと彼女自身の深い体験と、それを伝えたい溢れる想いがあったのだろうと思います。

子供にぜひ読み聞かせてあげたい本です。

私も子供が幼い頃、一度だけ読んでやったことがありますが、大きくなった今でも

しっかり記憶に残っているようです。

 

もちろん、大人のための絵本としてもおすすめです。

読むたびに発見があり、深く心に落ちるものがあることと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

2014年3月18日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : naomi-room

ファミリー・ライフサイクル(家族の発達段階)

春は人も自然も、変化の多いシーズンですね。

中学校、高校、大学など卒業式が次々と行われているようです。

親元を離れて進学する方、社会人としての一歩を踏み出す方、それぞれの春ですね・・。

 

ファミリー・ライフサイクル(家族の発達段階)という概念について聞かれたことがあるでしょうか。

家族療法では、家族をみていく上での重要な視点として、しばしば取り上げられます。

人の一生を、家族という視点で大きく捉え、各段階に整理したものです。

結婚前の若い成人の段階、結婚による新しい家族形成の段階、幼い子供のいる段階、青年期の子供のいる段階、

子供の独立の段階、晩年の段階。

 

人生にはさまざまなイベントがあります。

進学、就職、結婚、子供の誕生、親の介護、家族の死、などなど。

これらの出来事にまつわる日常の変化は、家族に計り知れない影響を与えます。

そして、その影響を受け止めるために、家族それぞれのメンバーに成長課題があります。

例えば、「結婚」というイベントには、夫婦関係の形成、経済的確立、配偶者の両親など新しい家族との

関係づくりなどの課題が考えられます。

また「子供の誕生」という出来事に関していえば、親としての責任とか子供を含めた夫婦関係の再調整

といった課題があります。

家族の変化を乗り越え、安定を得るためには、それぞれの家族メンバーの成長が求められるのです。

 

今、家族関係が幸せに安定しているのなら、こうした家族の変化の中で柔軟に課題に対応し、成長してきた結果

ともいえるのでしょうね。

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この春、お子様の進学や独立などで、家族の変化を迎える方も多いと思います。

ファミリー・ライフサイクルの視点からみるとこの時期、新たな課題がたくさん・・・。

親子関係の再構築(大人同士の関係に・・・)、コントロールの喪失を受け入れること、夫婦関係の再調整などなど。

課題の多い時ほど、より逞しく、素敵なご家族に成長するチャンスです!!

 

 

 

 

 

2014年3月8日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : naomi-room

魂のスケーター

今日の朝日新聞の朝刊の一面に、演技を終えた浅田真央さんの会心の笑顔と、「真央 3回転跳びきった」

の文字が踊っています。

メダルはなくとも、このようにトップ記事でとりあげられたことを、とても嬉しく感じました。

 

浅田真央さんのフリーの演技には息をのみました。本当にすごかった。

ほとばしる力が細胞の一つ一つにまでみなぎり、すべてを受け入れ、空気を切り裂き、この一瞬を舞う姿。

人間わざとは思えません。

そして何より美しかった。

このような演技の前に、メダルだとか点数だとかあらゆるジャッジは色あせ、意味を持たないと思います。

ジャッジに支配されるものではなく、あらゆるジャッジを超越した魂の舞でした。

 

演技を終えてリンクの中央に立つ真央さん、それを見つめる佐藤コーチをカメラがとらえていましたね。

あの静かな強い眼差しにも胸をうたれました。

言葉よりも雄弁に、万感の思いが伝わってきました。

 

華奢な体に人々の思い、自身の思いや軌跡、この世の次元を超えた何か、本当にいく千万のものを背負い、

あの舞台で昇華させた浅田真央さん、凄いスケーターです。

 

 

 

2014年2月22日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : naomi-room

涙の効用

ソチオリンピックから目が離せません。

連日寝不足の方も多いのではないでしょうか?

テレビ観戦とはいえ、やはりリアルタイムで「ワッ・・」とか「キャッ!」とか言いながら観る高揚感。

次々と繰り広げられるストーリーは、筋書きのない崇高なドラマですね。

 

その中に映し出される選手たちの表情、体からあふれ出る感情の表現、とりわけ試合後の目に光る幾多の涙。

歓喜の涙、悔し涙、せつなさの涙、感謝の涙、後悔の涙・・・

その世界は繊細で、複雑で、容易に推し量ることなどできません。

しかし、選手たちの素直な感情のほとばしりや、湧き上がる感情に耐えている様子などをみると、

こちらも胸がいっぱいになります。共感してしまうのですね。

 

「情感豊かに涙を流す」人間だけにみられるこの行為には、計り知れない効用があるようです。

悲しくて、悔しくて、どうしようもなくみじめで・・・

そんな苦しい時は、素直に滂沱と涙を流す。感情に身をゆだね我慢などしない。

そうすると、悲しいという事実は変わらないものの、涙の後に、ある種のすがすがしさ、すっきり感を

感じたことはないでしょうか。

またはより悲しくなったということもあるでしょう。それも大切なプロセスです。

素直に涙を流している時は、自分の心に深く触れています。

いわば心の解放が起こっています。

それにより、カタルシス効果(浄化作用、抑圧された精神的苦悩を積極的に表出させて解消すること)

が進んでいます。

めそめそしているようで、実は心の中では、大きな良い変化が起こっているのです。

 

子供の頃、「泣いたカラスがもう笑った」とからかわれた経験はありませんか?(うちだけ・・??)

これなどカタルシス効果の最たるものではないでしょうか。

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しかし、多くの人は涙を流すことに抵抗があるようです。

男が泣いてはいけない・・・。泣くなんて自分のキャラじゃない・・・などなど。

そもそも自分のキャラなんてありません。すべては、自分の経験や周りからの価値観などで創り上げられたもの。

人は本来、何の捕らわれもない無垢な存在なのです。

 

あなたのその涙、我慢しないで。

 

 

 

 

2014年2月12日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : naomi-room

家族の信念

前回のブログで、「個人の信念」について触れました。

幼い頃から周りの大人からの影響や、自分の経験の積み重ねにより身につけていく「信念」、

今日は「家族の信念」を取り上げてみたいと思います。

 

家族には、その家族メンバー特有の「家族の信念」というものがあるようです。

アメリカの著名な家族療法家、ペギー・パップ女史によれば「家族の信念とは、両親がそれぞれの出身家族から

引き継ぎ、核家族に伝達している態度、常識、期待、偏見、確信などの混合物である」と定義されます。

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文字Tシャツを思い浮かべてください。Tシャツに大きくメッセージが描かれたあのシャツ。

例えば「常識人」とか「私は雨女です」とか「困った息子です」とか・・・

それぞれの家族はお揃いの文字Tシャツを家族のユニフォームとして着ているとイメージしてみてください。

そのお揃いのTシャツの文字はさまざまです。

「常にトップを目指せ」「人には親切に」「頼りになるのはお金である」「楽をしてはいけない」などなど。

もし「安定した人生こそ最高だ」というスローガンを持った家族であると、子供が会社に就職せず、画家を目指すと

言った場合、きっと問題になります。

一方で、「人生はチャレンジだ」というスローガンを持った家族であれば、捉え方はきっと違うでしょう。

 

さて、あなたの家族のユニフォームにはなんて書いてあるのでしょう・・?

そのスローガンはどんな時役に立っていますか?

どんな時負担に感じますか・・?

 

 

 

2014年2月5日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : naomi-room

インフルエンザ

生まれて初めてインフルエンザに罹り、一週間まるまる自宅にこもっていました。

もともと丈夫な体質とみえ、インフルエンザの予防接種を受けたこともなければ、

周りが次々とインフルエンザに罹っても、決して感染しないのが自慢でした。

ところが今年は家族から感染し、回復までに6日間も要してしまったのです。

 

発症の状況や経過からみてインフルエンザに間違いないと確信しましたが、病院には行きませんでした。

家族から再三病院に行くよう促されましたが、頑として聞き入れず自宅でひたすら回復を念じて過ごしました。

あまりの頑固さに周りもあきらめたのか、3日目くらいから何も言わなくなりました。

 

この頑固な行動の裏には、私の「信念」が深く関係しています。

そう、人の考えや行動に影響を与える、その人特有の数々の「信念」。

今回病院に行かないという行動を支配した私の「信念」とは例えば次のようなものです。

「人間の自然治癒力を信頼すべきである」「できれば薬は飲まない方がいい」

「私の家系は、随分たくましいのである」

別の信念を持った人からみれば、はっきり言ってなんの意味もないものでしょう。

さっさと病院のお世話になって、早く直したほうがどれだけいいことか・・。

今回これら自分の信念のおかげで私のインフルエンザは長引き、あまりに熱がだらだらと続くので

肺炎を併発したかと心配になったほどでした。

次回インフルエンザに罹った時はちゃんと病院に行こうと思います。

 

幼い頃から周りの大人の影響や、自分の経験の積み重ねによって、身につけていく「信念」、

生きる力にもなる大切なものですが、時としてマイナスに作用することもあります。

上手に付き合いたいですね。

 

「信念」は心理学的にもとても興味深いテーマです。

近いうちに「家族の信念」について紹介したいと思います。

 

 

 

2014年1月27日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : naomi-room

酒びたりの男

星の王子さま(サン=テグジュベリ作)からの一節です。

 

次の星には、酒びたりの男が住んでいた。

王子さまがここを訪ねたのは、わずかな間だったが、それでもとても憂うつな気持ちになってしまった。

「そこでなにをしてるの?」王子さまは、酒びたりの男に聞いた。

男はからっぽになった瓶と酒の入った瓶を、それぞれずらりと並べて、その前で何も言わずにすわっていた。

「飲んでいるんだ」暗い面持ちで、酒びたりの男は答えた。

「どうして飲んでいるの?」王子さまがたずねた。

「忘れるため」男が答えた。 

「忘れるってなにを?」なんだかかわいそうになってきて、王子さまは聞いた。

「恥じているのを忘れるため」男はうつむいて、打ち明けた。

「何を恥じているの?」救ってあげたいと思って、王子さまはたずねた。

「飲むことを恥じている!」酒びたりの男はそういうと、沈黙の中に、完全に閉じこもった。

 王子さまは、どうしたらいいのかわからなくなって、その星を後にした。

 

話は現実に戻り、最近目にした場面です。

朝から赤い顔をした老人が、その孫娘に語りかけています。

「おじいちゃんは朝からお酒ばかり飲んで、寝て、また飲んで・・。ダメなことはわかっとるのに、

やめられんのよ・・・。」

少し離れて聞いていた私も、なんとも切ない気持ちでした。

ダメといわれる行為を繰り返す人。その心の中にある純粋性、孤独、繊細さ・・・。

その物語を私たちはどれだけわかろうとしているのでしょうか・・? 自省を込めて。

 

 

 

 

 

2014年1月17日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : naomi-room

癒やしとは全体性の回復

お正月も一段落ですね。

お休みをゆっくりと過ごして、心も体も健やかに整えたいものですが、

実際にはかえって忙しくて、そうもいかなかったり・・。

お休みに限らず、現代人にとって「癒やし」の時間を上手にとることは一つの大切なテーマだと感じます。

脳科学者の茂木健一郎さんによると、脳の働きから見て「癒やし」とは「全体性を回復すること」。

脳のあるモードしか使っていないと、どうしても歪みが生じてくる。そこで普段は欠けているモードに

自分をさらしてあげることで、脳の働きのバランスが良くなって「癒やし」が生じる。

 

普段自分が体験することや、行うことには意外と偏りがあるものです。

毎日のちょっとした時間で、脳のおろそかにしているモードを積極的に使ってみませんか?

月を眺める。冬の星座を見上げる。庭の四季の移ろいを探してみる。

無心になれるちょっとした趣味の時間。しばし自然の音に耳をすませてソファでくつろぐ。

目の前の仕事や勉強に、前のめりに生きていると、自分がそのようなものを欲していることすら

気づかないでいるのかも知れません。

健やかに自分を整えるために「癒やしの時間」、意識してみませんか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2014年1月9日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : naomi-room