少し前に出会った絵本 「きりのなかの はりねずみ」
ノルシュテインとコズロフ/作 ヤールブソワ/絵 こじまひろこ/訳
読むたびに、発見があります。
ある時は、子供だった頃の感覚が甦る。
夢中で遊んでいるうち、いつしか日はとっぷりと暮れ、異世界がひたひたと迫っていることを知る刹那。
冷たいしずくが、つつっと背中を伝いおりていくかのように、根源的な孤独をふいに感じた昼下がり。
ある時は、親としての自分をやんわりとたしなめられる。
誰にも侵すことのできない、子どもの世界をほんとうに信頼しているか。
子どもを見守るものが、この世界にはあまたにあることも思い起こさせてくれる。
それぞれのやり方で、つかず離れずの優しさで。
ある時は、自分が人間という特殊な存在であることを突き付けられる。
人間社会のすぐそばに息づく、無数の命の気配をいつも感じているだろうか。
自分たちだけのフィールドに生きているかのように勘違いしてはいないだろうか。
人間関係とよくいうけれど、生き物関係はどうなっているのだろう。
この絵本に人間は登場しません。
ただ一行、「とおくのむらから うたごえや バラライカのおとが きこえてきます」とあります。
はりねずみが、川に沈んでしまいそうになっているとき……
今、あらゆる均衡が危うくなっているような気がします。
力を誇示し、押し通そうとするものたち。
その勢力が、閾値を超えると取り返しのつかないことになるのではないか……
人間社会も、生き物社会も。
私に何ができるのでしょうか。
心の深みに降りていくのを助け、考えさせられる絵本です。